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Oasis [EXIT]

彼が私に残したものは、少し高めの体温と、
微かな煙草の残り香の記憶だった。

暑さの緩んだ日差の中で、木洩れ日を揺らす風にスカーフが翻る。
思わず麦わら帽子を押さえ、空を仰いで、その鮮やかさに目を細めた。

清新な空気を吸い込み、聞き覚えがある声にふと振り返る。
まっすぐな視線。
夏の力強さを写したような瞳は、少し潤んでいて眩しい。

「よかった追いつかないかと…」

言い終わるより先に、頬に口づけをする。
左側にできる笑窪が愛おしいと思ったから。

「えっ」

「お礼。」

少し前までの、靄がかかったような気持ちが薄らぎ、笑う。
オアシスのように瑞々しい優しさで満たされた私は、彼を背にまた歩き出した。


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