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平穏の彼方へ [EXIT]

昨日と同じ動作で今日に向かう途中、彼女はメモリの点滅に気づいた。
それから少し考え、決めた。

「ねぇ百年記念日だから会ってみよ!見つけてね?」

戸惑う彼を記憶し、素早く電源を落とす。
荒廃した街、見渡す限りの雑草、煤けた顔の動物たち。
笑顔の練習をしていた所へ来た彼に言う。

「ね?あるんだよ現実」

できるだけ優しく笑った。
不器用な動作で必死に走ってきた彼には、どんな風に映るだろう。

「さぁ帰ろう」

表情はないが初めての言葉にしては、はっきりしていて、
乾いた空気を震わせる声は予想より少し高い。

「帰るって?ここが現実なんだよ?目を覚まして?」

圧倒的に痛々しく、絶望的に寂しげで時間を失った世界こそ、私達に相応しい。

「目を閉じて」

キスで目が覚めると思い出のディスクで記憶している。
彼にとって始まったばかりの世界の中心で私達は初めてのキスをした。
おとぎ話のような今日を終えると、頬が微かに熱を持ち、薄紅色に染まっていた。

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